「自身で作ってきた全ての繋がりの中から仕事が生まれている」
四万十町で『カゴノオト』を営むお二人が大事にされている、人との繋がりや想いについてお話を聞いてきました。
”移住する”という決断
共に20代から東京へ上京してきたという、前さん小清水さんご夫婦。移住についてずっと考えていた、というお二人が決断を下したのは、東日本大震災がきっかけだった。震災直後から食べ物が不足し、ライフラインが止まるなど多くの危機に脅かされた時に、自分の手の中に暮らしがないと気づき、それまで以上に移住に向けての活動を始めたそう。
候補地として長野県も検討していたとのことだが、移住後の生業として、前さんは「農業」を、小清水さんは「カフェ」をしたいと考えていたこともあり、知り合いのいる四万十町十和に移住しようと決意したという。
移住後の生活について伺うと、「移住前は『のんびりした生活ができる』と思い四万十町へ来たが、実際移住してみると忙しいです(笑)」と小清水さん。また、「移住直後は行きたい場所や目新しいところなどに行くので、毎日とても楽しく感じますが、3年経つと新しさはなくなり帰りたいと思うことがあった。今は仕事を通じて人と繋がれるし、自分で物事を決められることは楽しく充実している」と悩んでいた時期についてもお話してくれました。
四万十町の“旬”を集めたシュトーレン
町の魅力について尋ねると「誰がどんな場所で作っているのかが分かる“食べ物”や、みんなが気軽に話しかけてくれる“あったかさ”ですね。安心感があります」と小清水さん。東京では、お店で買っていた野菜や果物の生産者を知ることがなかったそう。四万十町に来て生産者の分かる食材に出会い、その日常を貴重だと感じたお二人は、旬の素材を漬けたり干したりして大切に保存していたのだとか。お二人が営む『カゴノオト』の店頭にならぶ、様々な食材のラム酒漬け。その瓶には、果実や野菜の写真と何月に漬け込んだのかが一目で分かるようになっている。そのラム酒漬けを使って作られているのが『1年かけた四万十の旬でつくるシュトーレン』だ。
カゴノオトのシュトーレンは毎年注文するファンの方が年々増えている。その魅力は美味しさだけでなく、前さん小清水さんの人柄もあると思う。シュトーレンの予約は発送の1年前になる11月から始まる。その際、予約いただいた方一人一人に手書きの手紙を送るのだとか。「注文数が多くなりどんなに忙しくても、注文してくれる方との繋がりを大事にしているんです」と話す小清水さんからは、シュトーレンと繋がっている方達を慈しむ想いを感じました。
移住を考えている方にメッセージ
「移住がゴールではなくて、移住してそこから何ができるか、何をやり続けるかだと思う。移住する前より移住してからの方が長いので。そこをしっかり考えていけるといいですね」と、この12年間を振り返ってお話してくれました。
四万十町の一押しスポット
町の好きな場所についてお伺いすると「空の青、田んぼの緑、普段の景色が大好きです」と答えてくれました。